大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。
仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
法人を設立して仮想通貨の税金を下げるのは可能か?
村上裕一公認会計士事務所
代表 村上裕一
こんにちわ!
公認会計士・税理士の村上です。
本日は、法人を設立して節税したいという方に向けての解説をします。
仮想通貨投資を行っていたら、思っていたよりも大きな利益が出た(いわゆる爆益が出たケース)で、 いろいろ調べていると個人の税率よりも法人の税率の方が優遇されている。ならば、法人を設立して税金を下げたい!
こういう人に向けた説明となります。
税理士として様々な税務に関与していますが、結論から申し上げると、法人設立しての税金下げは難しいと言えます。
法人のメリット
最も大きなメリットは税率
ではまず、法人化のメリット・デメリットについて解説します。
法人の最も大きなメリットは税率になります
個人ですと、いわゆる累進課税が適用され、所得が増えれば増えるほど多くの税金が負担されることとなります
その税率は15%~55%。
何と、4,000万円以上の所得については、55%の税率が適用されるのです。
対して、法人は税率が固定されています。 中小企業における法人税率は、利益800万円以下の部分については15%、それ以上については、23.2%となっており、固定されています。
仮想通貨のように、利益が大きければ大きいほど法人化することで節税が図られることとなっています。
法人のメリット9選
他にも法人のメリットは以下の通りとなります。
【法人のメリット】
①税率
②決算期を変更できる(節税の選択)
③経費が広く認められる
④所得の分散を図れる
⑤給与所得控除の利用が可能
⑥生命保険料を経費にできる
⑦役員退職金の支払いが可能
⑧赤字の繰越が最大10年間へ
⑨損益通算の可否
メリット9選の詳細
法人のメリット9選の詳細は以下の通りです。
①税率:上で述べた通り、所得税は超過累進課税であり、法人税は一定税率となっています。
②決算期を変更できる:個人は1月~12月となっていますが、法人は決算期を自由に設定でき、変更も可能です。
③経費が広く認められる:個人が「雑所得」として仮想通貨投資申告した場合、経費は限定的(くわしくはこちら)ですが、法人はその法人の活動に欠かせない部分は経費となるため、相対的に経費の範囲が広くなります。
④所得の分散を図れる:こちらは簡単に言えば、1人に1,000万の報酬を渡すより、2人で600万、400万のように分散することで低い税率を適用できます。
⑤給与所得控除の利用が可能:給与所得となるため、給与所得控除(いわゆる会社員のみなし経費)が使えます。
⑥生命保険料を経費にできる:会社として役員等にかけた生命保険料は、1/3から全額を経費にできます。
⑦役員退職金の支払いが可能:役員退職金を法人では系仁、個人では退職所得として優遇された税率で扱うことが可能となります。
⑧赤字の繰越が最大10年間へ:法人経営の場合、赤字を最大で10年間繰越して、翌年度の税金を下げることができます。
⑨損益通算の可否:個人の雑所得だと、給与所得や事業所得などの他の所得と相殺はできませんが、法人だとそもそも所得を区分する必要がないので、他の事業と損益通算できます。
法人のデメリット
法人特有のデメリットが生じる
上記の通り、法人化には数多くのメリットが生じます。
ですが、一方で、法人は多くのデメリットを抱えているもの事実です。
まずは、仮想通貨特有の論点として、保有資産の移転の税金があります。
法人化を検討されている方であれば、現在は仮想通貨を個人として所有していますが、それを法人へ所有権を移転させなければなりません。
現状、その所有権の移転の際に、どうしても個人の所得税が発生することとなります。
低額譲渡と言われており、仮想通貨を時価より安い価格で譲渡したとしても、税金の計算上は時価に近い価額で譲渡したものとみなされ、個人の税金が発生するのです。
法人のデメリット7選
さらに、法人のデメリットとしては以下も挙げられます
【法人のデメリット】
①仮想通貨の含み益にも税金がかかる
②設立費用、時間と手間がかかる
③社会保険料の負担
④会計事務所・税理士事務所への費用
⑤維持経費がかかる
⑥資金の使い方に制約がある
⑦税務調査の確率が上がる
法人のデメリット7選の詳細
上記の法人のデメリット7選の詳細は下記となります。
①仮想通貨の含み益にも税金がかかる:個人の場合は、売却等行った際の実際の利益に対して税金がかかりますが、法人の場合は、決算期末時点で保有している仮想通貨の値上がり部分(含み益)にも税金がかかります。そのため手もとに資金がないのに税金がかかる可能性があります。
②設立費用、時間と手間がかかる:設立費用は登記費用などが掛かり、合同会社だと10万、株式会社だと約30万円かかります。
③社会保険料の負担;社会保険は、法人の場合は加入義務があり、その料金がかかります。
④会計事務所への費用:法人化すると、決算期末に決算書を作成し、法人税等の申告が必要になります。税理士等へ依頼するため、その費用がかかります。
⑤維持経費がかかる:上記④とも重複しますが、他にも、住民税の均等割りとして、利益にかかわらず発生する費用が年間7万円かかります。
⑥資金の使い方に制約がある:例え一人会社であっても、勝手に自身のお金として使えず、役員報酬の分のみ自由に使えます。会社の金と個人の金を区別しなければなりません。
⑦税務調査の確率が上がる:総じてですが、個人より法人の方が税務調査の可能性は高くなります。
最後に
法人化はケースバイケース
いかがでしたでしょうか?
法人化については、本当に個々のケースを検討して考えなければならず、設立した方が得か、設立しない方が得かについてはケースバイケースとなります。
税理士として、個人的に法人化をおすすめするタイミングは以下の2つです。
①安定してそれなりの収益を得ることができる見込みがあること(安定収益)
②法人としてやっていく覚悟があること
法人化のご相談も承っています
弊社では、仮想通貨に詳しい税理士として、もちろん法人化のご相談も承っております。
法人化のシミュレーション、節税額のシミュレーション、法人化のご相談などございましたら、是非とも弊社にお問い合わせください。