ビットコインに法人化は有効なのか検証する

村上 裕一
この記事の監修

村上裕一公認会計士事務所
代表 村上裕一

大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。
仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。

query_builder 2021/08/07
仮想通貨
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こんにちは。公認会計士・税理士の村上です。


本日は、ビットコイン投資に法人設立は本当に有効かどうかについて、私の意見を交えつつ解説します。


よく、仮想通貨投資を始めたものの、節税目的で法人設立をしたい、という方が多いですが、実際に法人を設立することでどれくらいのメリットが得られるのかについて解説します。

法人化のメリット

節税①法人税率<(所得税率+住民税率)

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それではまず法人化のメリットについて解説します。


何と言っても法人化のメリットは税率です。


個人の所得税は最高税率55%となります。

税率が55%になるのは下記のブログでも解説しています。

ブログ「【衝撃!】仮想通貨の税金は最大で55%


そのため、仮想通貨投資でものすごく爆益が出たとしても最高税率の55%が適用され、多くの所得税及び住民税を支払わなければならないのです。


ですが、法人税率は概ね一定の税率になっています。

詳細な法人税率は複雑な計算式があるのですが、基本的に法人税率は33%程度になっています。


ただし、法人を設立した場合は、役員報酬や給料としてお金を受け取ることが基本になるかと思いますが、この役員報酬や給料は所得税及び住民税の対象になるので、単純に税率が低いからと言ってメリットが高いわけではないので留意が必要です。



節税②給与所得控除が使える


続いて、法人化のメリットの一つは「役員報酬や給料に給与所得控除が使える」という点です。


上のところで、役員報酬や給料として所得税及び住民税の対象になると申し上げましたが、この場合に給与所得控除が使えます。


個人ですとこういった給与所得控除が使えないので、その分節税にはつながらないです。


なお、給与所得控除とは、給料に対して認められている所得控除項目となっています。


節税③損失の繰越が10年間行える


そして、法人化の3つ目のメリットは、損失の繰越期間が10年へと延長される点です。


個人で保有している場合は、基本は雑所得になるかと思います。その場合は損失繰越すら認められていないです。

仮に、個人所有で青色申告を提出していて、仮想通貨投資を事業所得に計上したとしても、3年間しか繰越控除は認められていません。


なお、ビットコイン投資を事業所得に計上するには非常に高いハードルがあります。

その詳細については、下記のブログをご参照ください。

ブログ「ビットコインで得た収入を事業所得にできるか?


損失繰越を10年間にすることで、例えば1~3年目までは赤字で、4年目に黒字が出たとしても、4年目の黒字んも全額に税金がかかるわけではなくて、1~3年目までの赤字分を控除した額に税金がかかるので、節税につながる面があります。



法人のデメリット

コスト①設立コストがかかる

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それでは、法人化のデメリットを解説します。


法人化のデメリットは主にコスト面となります。


まずは、コストの大きなものとしては、設立コストとなります。新たに法人を設立する場合、どうしても設立コストがかかってきます。


設立コストですが、株式会社であれば30万円程度、合同会社であれば10万円程度かかります。


また、設立に際しての時間もかかり、最短でも2週間程度の時間を要します。


コスト②維持コストが高い


続いて、法人化のデメリットとしては、維持コストがかかる点です。


例えば、法人化をするのであれば、しっかりとした記帳業務に、決算書の作成、税務申告が必要になります。

税理士にそれらの業務を依頼する場合、月額で最低でも3~4万円、決算は20万円程度の金額がかかってきます。


さらに、住民税の均等割りという税金がかかってきます。

これは、赤字であっても一定の法人税を支払わなければならないものとなっており、仮に赤字であっても、一定の税金を支払わなければならないのです。



仮想通貨投資法人の留意点

含み益が課税対象

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ここでは、仮想通貨投資を法人化として開始する場合の留意点を解説します。

法人化の留意点は、「期末の含み益が課税対象となる」という点です。


下記ブログにて解説していますが、法人で仮想通貨投資を始めると、保有しているだけで多額の納税義務が生じる可能性があります。

ブログ「法人を設立して仮想通貨を扱う場合の留意点2つ


ですので、法人を設立して仮想通貨投資を始めるのであれば、しっかりと納税資金を現金として保有しておくことを忘れずにしておく必要があります。



法人化は有効かの検討

ポイント①個人で含み益のものを保有しているなら有効性が薄れる

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それでは、実際に法人を設立し、仮想通貨投資を始める場合に有効か否かについて解説します。


まず、現時点で多額の含み益を持っているのであれば、法人化の検討はすでに遅いです。

(すでに含み益を抱えていて、今後もさらに値上がりすると見込むのであれば話は別ですが)


これは、個人で保有している資産の含み益を法人の利益として計上できないためです。


個人で保有している仮想通貨は、法人へ譲渡し、その後に法人で外部へ売却することにより法人の損益が計算されます。


そのため、個人保有→法人へ譲渡の際に、含み益が実現されて、個人の所得税の対象となってしまうのです。



ポイント②法人税+給与の所得税の二重の税金がかかる


さらに、法人化の検討の際に重要なのは、法人化したとしても個人の税金を検討しなければならない点です。


法人化すれば法人税のみ支払えば完了というわけでありません。

法人化すれば、給料や役員報酬としてお金を受け取ることになるのですが、この給料や役員報酬も課税の対象です。


所得税や住民税が差し引かれます。


そのため、法人を設立して節税を考える方も、法人での税金および個人での税金の2面を視野にいれてシミュレーションしなければなりません。



ポイント③法人の税金後のお金は個人が自由に使えるお金ではない


法人化して、利益を輩出して法人税を支払ったとしても、その残ったお金は、自由に使えるお金ではないので、その点も留意しなければなりません。


例え一人会社であったとしても、法人が持っているお金=個人で自由に使えるお金ではありません


法人のお金を個人として使うには、給料として支払う(所得税や社会保険が差し引かれる)や、貸付金として貸し出す(返済義務が生じ、利息が生じる)などの制約があることを意識しなければなりません。



まとめ

法人化のご相談もお引き受けしています

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いかがでしたでしょうか。

何となく、利益が出ていると法人化を検討する方が良いとはよく聞きますが、実際にどのようなメリット・デメリットが出てくるかのイメージが付けば良いかと思います。


実際に法人化を検討する場合、複雑なシミュレーションが必要になります。

法人を設立すること自体はそこまで難しくありませんが、しっかりとシミュレーションをしなければ、結局法人を作ったものの損失を垂れ流すことになってしまった、ということになりかねません。


弊社では、仮想通貨の税金の専門家として法人化の検討もお手伝いしております。

もし、法人化の検討をしているのであれば、是非弊社にもお声かけていただけますと幸いです。


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