大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。
仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
法人を設立して仮想通貨を扱う場合の留意点2つ
村上裕一公認会計士事務所
代表 村上裕一
こんにちは。公認会計士・税理士の村上です。
本日は、仮想通貨の法人の会計について、主に個人との違いを説明しつつ解説します。
仮想通貨で法人を検討されている方は、まず下のブログで法人化による節税ができるかどうかをご確認ください。
https://ur-buddy-cpa.com/blog/cryptocurrency/houjin-setsuritsu
その上で、法人を進めるのであれば、以下の件をご留意ください。
留意点その1:含み損益が課税対象
売買等の損益は個人と同じ
まず、これは法人でも個人でも共通となりますが、仮想通貨の売買等の時点では損益認識し、税金の対象になります。
こちらは、現状は実現した損益は課税対象であるとして、個人保有と法人で共通の会計処理となっています。
そのため、通常通り、売買等を行った場合は、課税対象になります。
法人は期末の含み損益も課税対象
次に、法人保有と個人所有での違いですが、大きな違いとしては、「期末保有分の仮想通貨の評価損益が課税対象になるかどうか」があります。
法人で所有している場合は、期末に仮想通貨の評価損益が生じている場合は課税の対象となります。
まとめると、下記のようになります。
【仮想通貨の期末時価評価】
保有者 | 課税の対象 |
個人として保有 | 対象外 |
法人として保有 | 対象 |
そのため、法人で保有している場合、決算期末時点でいきなり仮想通貨の時価が上昇することによって、多額の納税義務が発生する可能性があります。
ここが非常にやっかいです。
実際にあるケースですが
①期末時点で仮想通貨の時価が高く、多額の納税義務が生じる
②法人の決算を締めている最中に、多額の納税義務に気づく
③多額の納税義務に気づいた際には、仮想通貨の時価が暴落しており、多くの仮想通貨を売却しないと納税できない
ということが発生しかねません。
ですので、日ごろから含み益については早期に検出できるようにする仕組み・体制を構築しておくことが大事です。
留意点その2:保有目的で勘定科目が異なる
仮想通貨の保有目的と勘定科目
法人で仮想通貨投資を始めている場合の次の留意点としては、勘定科目です。
実は、勘定科目は仮想通貨の保有目的によって異なっています。
保有目的別の勘定科目は下記の通りとなります。
【保有目的別の勘定科目】
保有目的 | 資産の計上 | 損益の計上 |
仮想通貨はトレード目的 | 棚卸資産 | 売上高 |
仮想通貨は支払目的 | その他流動資産 | 営業外損益 |
仮想通貨は投資目的 | 投資その他の資産 | 営業外損益 |
仮想通貨投資をトレード目的として保有している場合、保有している仮想通貨は「棚卸資産」に計上し、仮想通貨の損益は「売上高」に計上することとなります。
これは仮想通貨を本業の収益(の一部)として認識しているため、売上高に計上し、資産も流動性の高い棚卸資産に計上することになります。
対して、仮想通貨を支払い目的として保有している場合、本業の収益ではないため、売上高ではなく営業外損益に計上します。
そして、支払い目的であるために、流動性も高いために流動資産のその他に計上することになります。
最後に、仮想通貨を投資目的として保有している場合、こちらも本業の収益ではないため、売上高ではなく営業外損益に計上し、また、投資目的であるため、長期保有を表す投資その他の資産に計上することとなります。