大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。
仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
仮想通貨の税金の損益通算について
村上裕一公認会計士事務所
代表 村上裕一
こんにちわ。公認会計士・税理士の村上です。
今回は、仮想通貨投資の損益通算について解説します。
「仮想通貨投資の損益通算はできない」というのは聞いたことがあるかもしれませんが、その通りです。
ですが、一方で、仮想通貨投資内の通算、いわゆる「内部通算」は可能となっています。
ここでは、損益通算とは?内部通算とは?から、一体どういったものであれば通算できるのかについて解説します。
仮想通貨投資の損益通算はできない
損益通算とは?
ではまず、損益通算の定義から確認します。
損益通算とは、国税庁のホームページによると
~国税庁HPより引用~
「損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のものについてのみ、一定の順序にしたがって、総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することです。」
~引用終わり~
となっています。 一言で言うと、損益通算の対象となる所得について、赤字が出た場合は、課税所得の金額を減額することができる、ということになります。
例えばですが、不動産を経営している会社員は、給与所得と不動産所得があります。
給与所得は会社より500万収入を得たものの、不動産所得では景気が悪く100万円の損失を出したとします。
その場合は、所得の合計を400万(500万ー100万)として計算することが、損益通算となります。
これが、損益通算のできない所得であれば、損失をゼロとしてカウントし、課税所得を下げることができないのです。
【損益通算のイメージ】
仮想通貨投資は損益通算できない
それでは仮想通貨投資による損失が損益通算できるかどうかについて解説します。
結論から申しますと、 仮想通貨投資は損益通算できません。
理由は、仮想通貨投資の所得は雑所得に分類されており、雑所得自体が損益通算の対象ではないからです。
そのため、仮に給与所得が500万ある人が、仮想通貨投資で150万の損失を出したとしても、給与所得の500万に対して課税されます。
これが損益通算できるのであれば課税所得が350万になるので、課税所得が下がり税金が大きく減額されますが、損益通算できないので、給与所得の500万を課税所得として税金を納税しなければならないのです。
仮想通貨投資内の内部通算はできる
内部通算とは?
一方ですが、仮想通貨投資においては、内部通算は可能となっています。
内部通算とは、一言で言えば「仮想通貨内の損益を通算すること」です。
例えばですが、ビットコインで1,000万の利益を出した人が、リップルで300万の損失を出した場合、それらを通算した700万が課税所得として加算されるのです。
これは、雑所得の総合課税の対象であれば内部通算が可能となっています。
そのため、例えば海外FXは雑所得の総合課税の対象となっているため、仮想通貨の損益と海外FXの損益は相殺することができます。
なお、国内FXは雑所得の分離課税の対象となりますので、仮想通貨の損益との通算はできないので留意が必要です。
【内部通算のイメージ】
内部通算を利用することによる節税
そのため、仮想通貨投資を使った節税対策も可能です。
仮想通貨は手元で保有しているのみでは損益としてカウントされません。
(個人で所有している場合。法人ですと含み損益は課税の対象となります)
ですが内部通算ができるため、含み損を実現(いわゆる損切り)をすることで節税ができます。
例えば、期中にビットコインの売却で1,000万の利益が出た人は、特段そのままだと1,000万の課税所得となりますが、仮に別の仮想通貨であるリップルで300万円の含み損を抱えている場合、このリップルを売却し、含み損を損切りすることで、700万円の課税所得とし、課税所得を300万円下げることができます。
課税所得を下げることによって、税金を減額することができます。
ただし、損切りするのは次年度以降も含み損が回復しない、これ以上時価は回復しないと予想する仮想通貨のみです。
仮に、この例でリップルが300万円の含み損を抱えていても、次年度に回復する見込みであればそのまま保有しておくのが望ましいです。