大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。
仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
仮想通貨の確定申告が不要なケース
村上裕一公認会計士事務所
代表 村上裕一
こんにちわ。公認会計士・税理士の村上です。
本日は、仮想通貨の確定申告が不要なケースについて、この記事で解説します。
会社員だと、よく「20万円以下の場合は確定申告は不要ですよね?」という問い合わせを受けるのですが、会社員でも一部確定申告が必要になる場合がありますので、その点など解説します。
仮想通貨の確定申告が不要な代表3ケース
【全員】仮想通貨投資のトータルがマイナス
まず、仮想通貨投資を行っていても、仮想通貨投資で1年間トータルが損失であれば、そもそも確定申告は不要となります。
これは、仮想通貨の損失は、以下の2点の特徴があるのが理由となっています。
理由その① 仮想通貨の損益は他の所得と相殺できない
仮に、給与所得が500万ある人が、仮想通貨投資で100万の損失を出したとしても、合計の所得の400万に対して課税されるのではなく、500万に対して課税されることとなっている。
理由その② 仮想通貨の損失は繰り越して翌年の利益と相殺できない
仮想通貨の損失は、株式などの損失と異なり、次年度へ繰り越すことができない。
上の2つの理由から、仮想通貨投資で損失が出たとしても、結果として税金は変わらないこととなります。
そのため、1年間のトータルの仮想通貨投資で損失が出た場合は、確定申告がそもそも不要となっているのです。
【会社員】副業の収入合計が20万以下
次に、最も良く言われている「20万円以下の利益だから申告不要」という部分です。
会社員の場合、基本的に副業からの収入が20万円以下の場合は確定申告が不要となっています。
会社員の場合、年末調整を通じて確定申告に相当する部分の調整が実施されています。
さらに、副業の利益が20万以下であればその副業の利益について確定申告をしなくてもよいこととなっています。
ここで一つ留意ですが、会社員で確定申告が不要となる場合ですが、副業からの「所得」が20万円以下の場合となっています。
所得とは、一言で言うと利益に該当するもので
所得=収入-収入に直接必要な経費
となっています。
仮想通貨投資の場合、仮想通貨の売却額が収入となっており、仮想通貨の購入額及び取引所へ支払った手数料が経費として認められています。
会社員が仮想通貨投資で確定申告が必要な場合とは、20万円超の利益(仮想通貨の売却額-その仮想通貨の購入額等)が出た場合となります。
【フリーランス】所得合計が48万以下
個人事業主(フリーランス)の場合は、基本的に仮想通貨投資の金額にかかわらず確定申告が必要となります。
ですが、例外的に、仮想通貨投資を含む所得の合計が48万円以下であれば、確定申告は不要となります。
これは、確定申告を実施する際に、基礎控除が48万円あることが起因しています。
すなわち、基礎控除額である48万円以上の所得があれば税金が発生することとなっています。
そのため、個人事業主としての所得+仮想通貨の利益+その他副業の利益が48万円以下であれば、そもそも税金が発生しないこととなり、確定申告が不要となっています。
ただし、確定申告が不要だとしても、源泉徴収されている場合や、株式投資の損失を繰越したい場合などは、確定申告を行うことで税金が戻ってくる、もしくは次年度以降の節税につながる面がありますので、ご留意ください。
所得税の確定申告は不要でも、住民税の確定申告は必要
住民税に金額の条件はない
ここで一つ留意すべき事項があります。
それは、所得が少額で確定申告が不要という場合でも、「住民税の申告は必要」となることです。
通常、住民税の申告は、確定申告の結果を受けて、自治体が計算し、納税通知書を郵送することで完了します。
そのため、住民税の申告という作業に馴染みが薄いですが、実際には副業で利益が少しでも出たら住民税の申告が必要になります。
住民税の申告については、自治体(市や区役所)に問い合わせて対応することができます。
自治体によっては専用の書類が出され、その書類に記入することで住民税の申告が完了します。
確定申告をしないと、、、税務署は見ています
通帳残高の調査権限がある
たまにですが、「海外の取引所をメインに利用しているので、国税にバレないですよね?」という問い合わせをいただきます。
当たり前ですが、国税や税務署の調査権限は広く、そのようなやり方は脱税として告発されてしまう可能性が高いので、バレそうにないからって確定申告しないのは絶対に止めてください。
まず、国税庁や税務署は、仮想通貨の取引所へ取引履歴などの記録の情報を入手することができます。
さらに、銀行の入出金情報も容易に入手することができます。
すなわち、国税庁や税務署は、あなたの仮想通貨取引所の全データと、あなたの通帳の入出金の全データを知ることができるのです。
仮に海外の取引所で、かつ国税庁や税務署が管理できないようなところがあったとしても、いずれは日本の銀行口座に入金されるので、その際に確実にバレてしまいます。
確定申告を行わないことによるペナルティ(加算税や延滞税など)は重たいです。
仮想通貨投資を行っており、確定申告が必要であるならば、正直に申告するべきです。
仮想通貨の所得隠しで告発された事例
最後に、仮想通貨投資での利益を申告せずに告発された事例を紹介します。
"ビットコインの利益を隠したと告発"
https://jp.reuters.com/article/idJP2021010801001816
上のように、仮想通貨投資で利益を申告しなかった場合には告発され、ペナルティとともに税金を払わなければならない場合があります。
仮想通貨投資は税金とセットで考える必要がありますので、仮想通貨投資で利益が出れば、適切に確定申告を行うことが必要となります。