仮想通貨の税金計算における経費の範囲

村上裕一
この記事の監修

村上裕一公認会計士事務所
代表 村上裕一

大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。
仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。

query_builder 2021/03/03
仮想通貨
仮想通貨の税金での経費

こんにちわ。公認会計士・税理士の村上です。


本日は、仮想通貨(暗号資産)投資をされている方からよく質問を受ける事項である、仮想通貨投資における経費の範囲について解説します。


経費は、節税にもつながる大事な概念です。


仮想通貨投資をされる方は、何が経費として計上可能かどうか、経費として計上できないものを計上していないかについてしっかりと確認しておくことをおススメします。



この記事では

・経費の概念

・仮想通貨投資で認められる経費の範囲

・仮想通貨投資で認められない経費の範囲

について解説していきます。



経費とは

所得=収入-必要経費


確定申告の際には、収入ではなく、「所得」を申告する必要があります。



ここで言う所得とは、


所得=収入-その収入に必要な経費


となっています。


この、その収入に必要な経費を「必要経費」もしくは「経費」と言います。


例えば、収入が100万あったとしても、その収入のために直接必要な経費が40万あった場合は、所得を60万(100万-40万)として申告するのが正しい処理となります。



経費を計上することで節税が可能



実はこの経費は、経費を多く計上することで節税につながるというメリットが存在しています。


税金の金額においては、「課税所得×税率=税金」という算式で税金が計算されるためです。



詳細に説明すると、税金の算定は以下の3ステップを通じて行われます。



【ステップ1】所得の算定を行う


収入-経費=所得として、まずは所得を算出する


【ステップ2】課税所得の算定を行う


ステップ1で算定された所得から、各種所得控除を差し引くことで課税所得を算出する。


所得-所得控除=課税所得となる。


ここで言う、所得控除とは、基礎控除や生命保険料控除などの項目で、所得税の算出のための各種控除項目を指している


【ステップ3】税金の算定を行う


課税所得×税率=税金として、最終的に納付するべき税金の金額を算出する




ここまで読めばある程度分かるかと思いますが、認められた経費を多く計上するほど、ステップ1における所得の金額が下がります。


その結果、ステップ2における課税所得もその分減額されることとなります。

結果的に課税所得に税率を乗じた税金も下がることとなります。


そのため、必要と認められる経費を多く計上することによって、節税(税金を下げること)につながることになります。




経費には認められたものしか計上できない



経費を計上することで節税につながるものの、当たり前ですが、なんでもかんでも経費として処理することはできません。



税務上、正しく認められたものしか経費としては計上することができないというルールがあります。



以下、仮想通貨の税金の計算にあたって、認められている経費の範囲について解説します。



なお、ここでは、個人の仮想通貨投資を前提としています。


会社を立ち上げ、法人として仮想通貨投資を行っているのであれば、経費の範囲は変わりますので、ご留意ください。




経費計上が可能なもの

仮想通貨の経費の概要


仮想通貨投資の経費の範囲について、具体的な説明の前に大前提となるその概要から解説します。



仮想通貨投資で認められている経費は、原則として


その仮想通貨投資に必要な支出であると認められるものは経費として計上可能


というルールになっています。



実際のところは、国税庁のFAQに具体的に経費として計上できる範囲があり、どのような経費でも「必要である」と勝手に断定して経費に計上することは難しいところとなっています。



結果として、仮想通貨投資で認められている経費は限定的であるのが実情となっています。




それでは、以下で具体的に仮想通貨投資で認められている経費について個々に説明します。



まず、経費ですが

①直接経費として計上できるもの

②直接経費として計上はできないものの、必要と認められる部分のみ按分して経費として計上できるもの

の2種類が存在しています。



経費として直接計上できるもの


直接経費として計上できるものは以下の通りとなっています。



【仮想通貨投資で認められている経費のうち、直接経費として計上が可能なもの】


・売却等を行った仮想通貨の譲渡原価 

・売却の際に取引所に支払った手数料

・仮想通貨投資のためのセミナー参加費用

・仮想通貨投資のための書籍購入代金

・(マイニングを行っている場合)マイニング用に購入したPCの代金(※1)

・(クラウドマイニングを行っている場合)クラウドマイニングの加入のために支払った金額(※2)



(※1)PCの購入代金が10万円を超えるのであれば、一定の年数で費用として認識する必要があります(これを減価償却と言います)
 例えば、20万のPC購入代金であれば、PCは4年で費用として認識するので、20万円÷4年間=5万円をその年の経費とすることとなります


(※2)クラウドマイニングのために支払った費用ですが、その効果が及ぶ期間にわたって経費として認識することとなります。

 例えば、3年間のクラウドマイニングの権利に120万円支払ったとすると、120万円÷3年間=40万円のみその年の経費として認識することとなります。


按分計算が必要なもの


次に、按分計算を実施した上で、仮想通貨投資の経費として認められるものを紹介します。


ここで言う、按分計算とは「その費用のうち、仮想通貨投資で必要と認められる部分を見積り、その部分についてのみ経費として計算する」ことを指しています。


按分計算をした上で経費として認められるもの】

・インターネットやスマートフォンの利用料金

・10万円未満のPCの購入代金(※)

・自宅の家賃、水道光熱費



(※)10万円以上のPC購入費用については、クラウドマイニング用のPCと同じく、年度での按分計算も必要となる。

 例えば、20万円のPCを購入し、PCのうち半分を仮想通貨投資に使用しているため、半分を経費として申告する場合

 20万円÷4年間×50%(仮想通貨投資の使用割合)の2.5万円のみ経費となります。



按分計算については

①使用している時間をベースに按分する

②(家賃であれば)使用している面積をベースに按分する

などの方法が通常のやり方となります。


実際の按分方法などについては、税理士に相談することをおススメします。



仮想通貨投資で経費として認められないもの

仮想通貨投資に関係のないものはNG


次に、仮想通貨投資の税金計算上、経費として認められないものを説明します。


まず、経費の概念上当たり前ですが、仮想通貨投資に直接関係のない費用は経費として計上することができないこととなっています。



【仮想通貨投資で経費として計上できないもの】

・投資仲間と楽しく飲食をした時の飲食代金

・投資仲間と旅行に行った

・仮想通貨と関係ない書籍の購入代金

・その他、仮想通貨投資に関係のない費用



大事なのは税務調査員に説明できること


最後に、仮想通貨投資の税金計算上の経費に関して、税理士の観点から最も大切なことを説明します。


一番大切なのは、税務調査が当たったときに、「これは仮想通貨投資に必要な支出です」と説明ができることとなります。



国税庁のFAQなどで、ある程度の線引きはあるものの、経費になるかどうかの実質的な判断は、実際に仮想通貨投資事業を行っている方のが最も詳しいのです。


そのため、税理士に認められたから何でもOKというわけではなく、自身で必要な経費と説明できることが最も大事となります。


自身でしっかり説明でき、それが顧問税理士や国税のFAQの方針とも大きくずれていないこと。

それが経費として認められるか否かの重要なポイントとなります。


今回は、仮想通貨投資の税金計算上の経費の概念についての説明でした。




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