【仮想通貨の税金】仮想通貨の所得を事業所得にできるか?
こんにちは。公認会計士・税理士の村上です。
今回は、仮想通貨の所得を事業所得に計上できないか?という質問に対して回答します。
既に下記のブログでもお伝えした通り、「仮想通貨の所得は雑所得」が国税庁のHPに記載されています。
https://ur-buddy-cpa.com/columns/kasou-tsuka-1/
節税を図りたいので、雑所得ではなくて事業所得にできないかな?と考える方は多いと思いますので、そちらについて、税理士の立場での考察をします。
事業所得と雑所得との違い
ではまずそもそも、事業所得にすることでどのようなメリットが得られるのでしょうか?
まずですが、事業所得であっても雑所得であっても超過累進課税の対象になることに変わりはありません。
国税庁のHPに記載されている下記の税率が適用されます
ただし、税金の計算は下記の表のようになっています。
まず収入から経費を控除して所得を算定します。
次に所得から各種所得控除を行い、課税所得を算定します。
課税所得に税率を乗じたものが税金となります。
事業所得にすることのメリット
事業所得にすることで、具体的には下記の5つのメリットがあります。
①他の所得との損益通算ができる
②青色申告特別控除を利用できる
③青色事業専従者給与が出せる
④損失を3年間、繰越控除ができる
⑤30万円未満の少額減価償却資産の特例が利用できる
実際に事業所得と雑所得を比較すると、下記のようになっています。
|
事業所得 |
雑所得 |
給与所得等との損益通算 |
〇 |
× |
青色申告特別控除(65万or10万) |
〇 |
× |
青色事業専従者給与 |
〇 |
× |
純損失の繰越し |
〇 |
× |
30万未満の少額減価償却資産の特例 |
〇 |
× |
やはり、事業所得にすることでメリットが大きく得られることが分かります。
さらに、雑所得として扱われる仮想通貨の経費ですが、実際にはかなり限定的になっているので、経費の範囲でも事業所得にはメリットが大きいと言えます。
仮想通貨の所得を事業所得に計上できるか
それでは、仮想通貨の所得を事業所得に計上できるかどうかについて検討してみましょう。
国税庁が「暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和2年12月)」を公表しています。 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm
こちらの「8 暗号資産取引の所得区分」には以下のように明記されております。
~引用~
暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得に区分されます。
~引用終わり~
すなわち、「原則として」と記載があるために、仮想通貨(暗号資産)の売却による所得を雑所得ではなく事業所得として認識することが不可能というわけではありません。
ただし、その下に下記が明記されています。
~引用~
暗号資産取引により生じた損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、
・その暗号資産取引自体が事業として認められる場合(注1)
・その暗号資産取引が事業所得等の起因となる行為に付随したものである場合(注2)
を除き、雑所得に区分されます。
(注) 1 「暗号資産取引自体が事業として認められる場合」とは、例えば、暗号資産取引の収入によって生計を立てていることが客観的に明らかである場合などが該当し、この場合は事業所得に区分されます。
2「暗号資産取引が事業所得等の起因となる行為に付随したものである場合」とは、例えば、事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産をしようした場合が該当します。
~引用終わり~
実際に生計を立てていることが条件となっており、非常に厳しいハードルであることが分かります。 通常、仮想通貨取引を行っている方は会社員をメインとしつつ、副業でやっている方が多く、「仮想通貨取引により生計を立てていることが客観的に明らか」とは言えない状態です。
ですので、仮想通貨取引に関しては、余程の理由がない限り、雑所得に分類され、超過累進課税の計算の下、大きな額を納税しなければならない、ということとなります。
特に、会社員で給料をもらっているのであれば、仮想通貨取引により生計を立てているとは言えないので、会社員の仮想通貨取引を事業所得に計上するのは非常に厳しい状況となります。
それでも事業所得として申請したいのであれば、形式的にも実質的にも事業所得であることを客観的に裏付ける証拠を準備しておく必要があります。
例えば、開業届の提出、帳簿の整備、契約書や領収書などから仮想通貨取引が事業であることが分かるもの。さらに、仮想通貨が主な生計の手段となるようなことが分かる証拠として、稼ぎのほとんどが仮想通貨の取引から生じていること、取引高や仮想通貨取引にかけている時間なども重要になってきます。
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