仮想通貨の売買損益が算定できない場合の対処法
こんにちわ。公認会計士・税理士の村上です。
本日は、仮想通貨の税務をやっていてよくいただく質問の1つである
「仮想通貨の売買損益が算定できない場合はどうすればいいの?」
という疑問に対して、専門家である税理士の視点から解説していきます。
仮想通貨の購入・売却額が分からない
年間取引報告書を入手する
仮想通貨の売買損益が算定できない場合は、まずは「年間取引報告書」を入手するよう動くことが大事です。
この年間取引報告書とは、仮想通貨業者が発行しているものとなります。
仮想通貨の取扱いに当たっては、国税庁から仮想通貨を取り扱う業者に対して「年間取引報告書」を作成するよう協力がなされおり、日本の仮想通貨取引所であれば、Webなどで年間取引報告書のデータや、紙面で年間取引報告書が郵送されてくることとなっています。
年間取引報告書には、以下のデータが記載されています。
① 年始数量 :その年の1月1日現在の暗号資産の保有数量
② 年中購入数量:その年の暗号資産の購入数量
③ 年中購入金額:その年の暗号資産の購入金額(取得価額)
④ 年中売却数量:その年の暗号資産の売却数量
⑤ 年中売却金額:その年の暗号資産の売却金額
⑥ 移入数量 :その年に購入以外で口座に受け入れた暗号資産の数量
⑦ 移出数量 :その年に売却以外で口座から払い出した暗号資産の数量
⑧ 年末数量 :その年の 12 月 31 日現在の暗号資産の保有数量
⑨ 損益合計 :その年の暗号資産の証拠金取引の損益の合計額
⑩ 支払手数料 :その年に暗号資産交換業者に支払った支払手数料の額
この年間取引報告書は、国税庁からの要請であり、仮想通貨をやっている方の損益計算のために最も有用な資料となります。
まずは年間取引報告書の入手を行いましょう!
国税庁HPの計算式を活用する
次に、年間取引報告書を入手できた場合は、そこから仮想通貨の損益計算を行うこととなります。
損益計算に関しても、国税庁が便利なツールを提供しています。
(国税庁HP 暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和2年12月))
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm
上のホームページに「暗号資産の計算書(移動平均法用)」と「暗号資産の計算書(総平均法用)」の2つがアップロードされています。
この計算書を使用することで、仮想通貨の損益計算が比較的楽に算定できるようになっています。
個人で運用している仮想通貨(暗号資産)であれば、原則として総平均法が適用されます。
(ただし、事前に申請しておくことで、移動平均法で計算することも可能)
そのため、上記ホームページより、総平均法のテンプレートをダウンロードし、テンプレートへ埋めていくだけで仮想通貨の損益計算をすることができます。
銀行口座の動きから推測する
上記は、年間取引報告書を入手できた場合ですが、
実際のところ、年間取引報告書を入手できないケースがごくまれに存在します。
【年間取引報告書が入手できないケース】
・海外の仮想通貨業者を利用した場合
・個人間取引を行った場合
この場合には、詳細な取引データを入手できない可能性があるので、代替的な手続きが必要となってきます。
その代替的な手続きとは
銀行の入出金金額及びその日における仮想通貨の時価から、購入枚数などを推測する
方法となります
実はこれ、国税庁のQ&Aでも記載があり、正式に認められている方法となっています。
大事なのは、計算に使った根拠資料をしっかり残しておくことです。
確定申告の税務調査は3年とか5年、最悪は7年後に来ることとなります。
それまでしっかりと資料を残しておくのが大事です。
根拠数値をしっかり説明できるならば、税務調査でも追徴となる可能性は低くなります。